人生の殆どを剣道に費やしてきた私の人生も、今年一月で古希を迎え、剣道を10歳の時に始めてから丁度六十年目を迎えることとなりました。失笑、あるいは叱咤されるか、わかりませんが、不治の心臓病に悩まされている昨今、そろそろ人生の『残心』の時期が迫っていることを切に感じることがあります。新年度のあいさつには似つかわしくない話題ですが、今年も充実した剣道生活ができるよう願いながら「残心」ということに拘ってご挨拶に代えさせていただきます。笑読していただければ幸いです。
近世の日本人(特に武士)は「死」というものをどんな風にとらえていたのでしょうか。気になっていろんな文献を読み漁ってみましたところ、近世武士の死生観は、彼らの生き様、死に様と無縁ではなかったようです。「この世」と「あの世」は表裏一体で結ばれており、受け入れがたい現実が目の前に突きつけられたときにあっても、先に繋がる、たとえば「死」ということに対しても「死」がどういうことか問わないままに「こちら」の世界(この世)を精一杯生き切ることに専心する。